2022/09/09
税理士 湊 義和

リバースチャージ方式の会計、税務の処理


Q:平成27年10月より消費税法等の一部が改正され、国境を越えて行われるデジタルコンテンツの配信等の役務の提供に係る消費税の課税の見直しが行われると聞きました。「リバースチャージ方式」とはどのような制度なのでしょうか。
A:改正に伴いデジタルコンテンツの配信等の役務の提供は、「事業者向け」と「消費者向け」に区分されることとなります。
 そのうち、国外事業者が行う「事業者向け」インターネットサービスについて、当該役務の提供を受けた国内事業者が国外事業者に代わり消費税の申告納税を行う制度を「リバースチャージ方式」といいます。又、国外事業者が行う「消費者向け」インターネットサービスについては、経過措置により原則仕入税額控除の対象外となりますが、「登録国外事業者」から提供を受けるサービスについては仕入税額控除の対象となります。
Ⅰ 「事業者向け」と「消費者向け」の違いについて教えてください

Ⅱ リバースチャージ方式は、どのような会社が適用対象になりますか?

経過措置により当面の間は、次の1・2いずれにも該当する会社が対象となります。
1.一般課税方式により消費税を計算する事業者で課税売上割が95%未満の場合
2.国内事業者が、下記いずれかの役務の提供を受ける場合
  ・国内事業者から受ける事業者向け(注)のインターネットサービス
  ・国外事業者が国内で行う芸能・スポーツ等の役務の提供

(注)「事業者向け」の判断について
  基本的にはサービスの性質から事業者向けであるか判断しますが、それが難しい場合には取引条件などから判断することとなります(法2①八の四)。
  また、事業者向けのインターネットサービスの提供を行う国外事業者には、サービスを受ける国内事業者に対し、当該国内事業者が納税義務を負う(そのサービスがリバースチャージ方式の対象となる)旨をあらかじめ表示する義務が課せられているため、取引開始時にこれら表示を確認いただくことも有用です(法62)。

Ⅲ リバースチャージ方式は、具体的にどのような処理が必要となりますか?

【前提】
当社の課税売上割合は 90%であり、簡易課税制度の適用は無い(一般課税方式により消費税を計算している)。
事例1
当社は国外事業者であるA社が提供するインターネットサービス(ビジネスプラン)の月額利用料として、11,000円を支払った。
請求書には「リバースチャージ方式の対象となる」旨記載されており、
この取引は課税売上・非課税売上に共通して要する課税仕入れに該当する。
≪仕訳≫
①支払い時
(支払手数料)11,000円  (現金預金)11,000円
(仮払消費税)  1,100円    (仮受消費税)1,100円
②決算時
(仮受消費税)  1,100円  (仮払消費税)  1,100円
(雑損失等)    110円     (未払消費税)      110円
≪処理≫
①支払い時
・本来A社が納める消費税1,100円は、当社が預かり、国へ納付する方式になります(リバースチャージ方式)。この分の消費税を「仮受消費税」として仕訳します。
・消費税の課税仕入れとして、仕入税額控除の計算に算入されるため、この分の消費税を「仮払消費税」として仕訳します。
②決算時
・課税売上・非課税売上に共通して要する課税仕入れの為、仕入税額控除の金額は下記のように計算されます。
 仕入れに係る消費税 1,100円×課税売上割合 90% = 990円
よって、納付額は
 リバースチャージ 1,100円 -仕入税額控除 990円 = 110円となります(未払消費税)。
・仕訳上の仮払消費税は 1,100円ですが、仕入税額控除の金額は 990円の為、精算時に差額が生じます。この差額は「雑損失」等で処理します。
≪課税標準について≫
 当社が支払った 11,000円が課税標準となります。
 支払った金額が税込金額と思われる場合でも、役務の提供を受けた事業者に納税義務が課されるため、支払った対価の額には消費税等に相当する金額は含まれていません。
(「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関する Q&A」問18・19より)

事例2
 当社は国外事業者(「登録国外事業者」に該当しない。)からインターネットを介して電子書籍 3,000円を購入した。
≪仕訳≫
 (新聞図書費)3,000円  (現金預金)3,000円
≪処理≫
・今回の取引は、国外事業者から受ける消費者向けのインターネットサービスであり、事業者向けではないためリバースチャージ方式の対象外となります。
・役務提供者が「登録国外事業者」に該当しないため、仕入税額控除の対象外となります。

Ⅳ 「登録国外事業者」についてはどのように確認を行うのでしょうか?

次の1又は2の方法により確認を行うことができます。

1.請求書により確認する方法
該当事業者は、請求書に登録国外事業者であることの記載が義務付けられています。

2.下記国税庁HPの登録国外事業者のリストにより確認する方法
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/cross/touroku.pdf

登録国外事業者に該当する場合には、従来「不課税仕入」であった取引は「課税仕入」とすることが出来、仕入税額控除の対象となります。

 

Ⅴ いつから施行されますか?

平成27年10月1日以後行う課税資産の譲渡等及び課税仕入から適用されます。

以上

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