2012/10/03
税理士 湊 義和

中小特例の不適用


Q:最近の税制改正により、これまで中小の法人に適用されていた特例のうち、親会社の資本金の額や売上高によってその適用が受けられないものがあると聞きました。どのような特例が不適用になったのかについて教えてください。
A:従来、資本金の額が1億円以下である中小法人に設けられていた法人税法上のいくつかの特例措置が、平成22年度および平成23年6月改正により、大法人に支配される中小法人については、その適用を受けることができなくなりました。また、平成23年12月改正では、これに加えて、貸倒引当金制度の廃止や、欠損金の繰越控除が制限されることになりました。さらに、平成24年8月10日に「社会保障と税の一体改革」関連法案が一部修正を経て可決・成立したことにより、一定の要件を満たす新設法人は、消費税の事業者免税点制度が適用されないこととなりました。
1.中小法人の法人税上の特例措置の不適用

資本金の額が5億円以上の大法人およびそのグループに属する複数の大法人に100%支配される中小法人は、次の法人税上の特例を受けることはできません。

(1)中小法人の軽減税率
普通法人の各事業年度の所得のうち、年800万円以下の金額に対する法人税の軽減税率15%(注1)の適用はなく、一律25.5%(注2)となります。
(注1)平成24年3月31日までの間に開始する各事業年度においては18%、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度においては15%の税率となります。
(注2)平成24年3月31日までの間に開始する各事業年度においては30%、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度においては25.5%の税率となります。

(2)特定同族会社の特別税率(留保金課税)
留保金課税が適用されることとなります。

(3)交際費等の損金不算入制度における定額控除制度
定額控除制度(年間600万円)の適用はできず、支出する交際費等の額の全額が損金不算入となります。ちなみに、一人当たり5,000円以下の飲食代を交際費等から除外できる規定は引き続き適用されます。



(4)欠損金の繰戻しによる還付制度
解散、事業の全部の譲渡など一定の事実が生じた場合の欠損金を除き、この制度による還付の請求は行えません。

(5)貸倒引当金の法定繰入率
一括評価金銭債権の貸倒引当金の繰入限度額の計算において、法定繰入率の選択は行うことができず、貸倒実績率により計算することとなります。なお、平成24年4月1日以後に開始する事業年度からは、貸倒引当金を繰り入れることができなくなり、この貸倒引当金制度自体が廃止されます。(注1)
(注1)この貸倒引当金制度の廃止に伴い、平成24年4月1日から平成27年3月31日の間に開始する事業年度については、繰入限度額について一定の経過措置が設けられています。

(6)欠損金の繰越控除の制限
平成24年4月1日以後に開始する事業年度から、欠損金の繰越控除制度における控除限度額が所得の金額の80%に引き下げられます。これに伴い、欠損金の繰越期間が9年に延長されます。

2.消費税の事業者免税点制度の不適用

従来、基準期間がない法人で期首資本金の額が1千万円未満のもの(注1)は、消費税の納税義務が免除されていましたが、平成26年4月1日以後に新設される法人で次の要件を満たすもの(特定新規設立法人)については、この事業者免税点制度が適用されず、設立初年度から課税事業者として取り扱われることになります。

・新規設立法人のうち、その基準期間がない事業年度開始の日(以下、「新設開始日」)において他の者が当該新規設立法人の発行済株式または出資の50%超を直接又は間接に保有するなど支配していること。
・当該新設法人を支配するまたはその法人と特殊な関係にある法人のいずれかの、「当該新設法人の基準期間に相当する期間」(注2)における課税売上高が5億円を超えること。

(注1)平成25年1月1日以後に開始する事業年度については、特定期間の課税売上高が1,000万円超となる場合を除きます。この特定期間とは、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間を原則とします。
(注2)「当該新設法人の基準期間に相当する期間」とは、たとえば平成26年4月1日に設立された12月決算の新設法人の場合、当該新設法人の発行済株式の50%超を直接保有している法人(12月決算)の平成24年1月1日から12月31日までの期間となります。

以上

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