2018/05/28
税理士 湊 義和

金融機関で取り扱いが始まった「iDeCo(個人型確定拠出年金制度)」について


 

ポイント
① iDeCoとは、平成29年1月から制度が拡充された個人型確定拠出年金制度の通称です。
② 20歳以上60歳未満の人は原則すべて加入することができます。
③ 掛金は、全額を課税対象所得から控除できるため、節税効果が期待できます。
④ 運用先は、全額元本保証の定期預金の積み立ても対象です。
⑤ 加入手続から1~2ヶ月後でないと口座から引落しが開始できないため、仮に12月に加入しても、所得控除の効果は来年度の分からとなります。
 
1 個人型確定拠出年金の概要

(1)制度のあらまし
ご自身が個人型確定拠出年金に加入して、掛金を拠出し、定期預金や金融商品などを運用することによって、将来受け取る年金を形成していく制度です。
予め将来の年金額や退職金額が決まっている確定給付年金(例:国民年金基金)とは異なり、加入者ご本人の運用次第で年金額が変動するため、投資リスクを各加入者が負うことになります。
しかし、定期預金など元本確保型の商品を選択することも可能ですので、運用期間中は掛金の所得控除を受けながら、ノーリスクで年金を形成することも可能となります。
なお、さまざまな取り決めがあるため、加入前にはしっかりと説明をうける必要があります。

(2)メリット
●掛金は所得控除可能
掛金は所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象となり、所得税や住民税の軽減効果があります。
●運用期間中の運用益は非課税
通常、預金利息や株式等の売却を行った際は源泉所得税が課税されますが、確定拠出年金に係る運用益には課税されません。したがって、運用益をそのまま投資に回すことが出来ますので複利効果が期待できます。
●60歳から受給可能しかも有利な税制
原則60歳から老齢給付金を受取ることができます。
老齢給付金は年金により受取る方法と、一時金で受取る方法のいずれかを選択でき、年金で受取る場合には「公的年金等控除」、一時金で受取る場合には「退職所得課税」が適用されます。
●離転職した場合にも便利
積み立てた年金資産の持ち運びができるポータビリティが高い制度です。
●公的年金の上乗せ年金制度の新たな選択肢
確定拠出年金は、国民年金基金や既存の企業年金に加え、新たな選択肢として公的年金に上乗せされる制度です。確定給付年金と組み合わせることにより老後の所得保障の充実が可能になります。

(3)デメリット
●運用損は他の運用益との通算が出来ません
確定拠出年金の運用損が生じた場合でも、他の金融商品の運用益と損益通算して所得税を計算することが出来ません。
●事務費などの手数料は加入者が負担します
加入時の手数料として2,777円が掛かります。
また、金融機関等窓口によって金額は異なりますが、運用期間中の毎月の口座管理手数料や給付金の受取時などに手数料が掛かります。
●掛金を途中で引き出すことはできません
原則、60歳まで引き出すことが出来ません。
●脱退一時金について
資産額が極めて少額な場合など、一定の場合に該当すれば脱退して一時金を受け取ることが可能ですが、原則脱退することが出来ません。

(4)加入資格
2017年1月の[確定拠出年金法等の一部を改正する法律]の改正により加入対象者が拡充されました。
<法改正前>

<法改正後>

(注)次の方は、法改正後も個人型確定拠出年金制度の対象外となり加入できません。
・国民年金保険料を未納、免除されている方
・農業者年金の被保険者

(5)拠出限度額
加入対象者の拡充により、掛金の拠出限度額も次のようになりました。

(6)運用商品
金融機関によって取り扱う商品の数や種類が異なり、例えばゆうちょ銀行や三菱UFJ銀行は元本確保型のラインナップが多く、SBI証券やりそな銀行は投資信託が充実してます。
投資信託は運用益が出た場合の利回りが良い半面、投資リスクや信託報酬という手数料が別途発生します。
下記の実質利回りを考えても、定期預金でも十分な節税効果が期待出来ると考えられます。

(7)実質利回り
例えば、第2号被保険者で税率が所得税30%、住民税10%の従業員の方が月額23,000円(年額276,000円)で確定拠出年金を始めた場合、掛金は全額所得控除の対象となることから、(掛金276,000円×税率40%(30%+10%)+掛金276,000円×預金金利0.01%)/276,000円≒40.01%が年間の実質利回りとなります。

(8)掛金納付方法
●掛金は5,000円以上で1,000円単位の任意の金額を設定できます。
●毎年4月から3月の間で年1回のみ掛金を変更することができます。
●法改正により、平成30年1月以降は、12月から翌年11月までの範囲において、複数月分をまとめて拠出することや、1年間まとめて拠出することが可能となりました。
●口座引落で納付となります。

(9)ポ-タビリティ
●企業型DCと個人型確定拠出年金とを併用していた方が離転職した場合、年金資金を持ち運ぶことが出来ます。
それまでに確定拠出年金により積み立てた年金資金は、そのまま個人型加入者として継続できるほか、転職先に企業型年金を導入している場合は、転職先の企業型年金に移転することが出来ます。
なお、個人型年金の加入者であった方が、企業に就職されることになったときも同様です。
●積み立てた年金資産を移転した場合には課税されません。

(10)税制上の取扱
●支払時
小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除の対象となります。国民年金基金連合会から送付される掛金払込証明書を添付して年末調整や確定申告を行います。

●運用時
特別法人税課税は平成31年度まで凍結のため、運用により生じた収益は非課税となります。

●受取時

 

2 個人型確定拠出年金 新規申し込みの流れ

(1)資料請求 ⇒(2)申込用紙記入 ⇒(3)承認通知 ⇒(4)引落日

(1)資料請求
加入の申し込み手続きは金融機関等(銀行・信金・生保・証券会社など)にて行い、窓口やホームページなどから資料請求を行います。
⇒年金資産の運用は、申し込んだ運営管理機関(金融機関等など、金融商品等を運営する機関)より選定・提示された商品の中から選択して行います。運営管理機関によって、取り扱っている商品が異なりますので、あらかじめ十分な説明を受けてよく検討の上、選択をする必要があります。

(2)申込用紙記入
加入申込書に、掛金や運用配分等を記載します。
また、第2号被保険者(会社員)の場合は、勤め先に「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」の記入を依頼し、申込書と共に提出します。

(3)承認通知
国民年金基金連合会による加入審査が承認されると、個人型年金加入確認通知書が届きます。
また、運営管理機関よりインターネット上で運用状況の指図や確認するためのID・パスワード等のお知らせが送付されます。

(4)引落日
掛金の口座振替日は加入申込月の翌月26日です。

以上

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