2018/01/17
税理士 湊 義和

平成30年度(2018)の税制改正のポイント解説(速報)


1 個人所得税

(1)給与所得控除の改正
①年収850万円を超える場合の給与所得控除を一律195万円とする。
②給与所得控除を一律10万円カットする。
(2)基礎控除
基礎控除を所得に応じて、以下の通りとする。
①合計所得金額2,400万円以下       48万円(10万円アップ)
②合計所得金額2,400万円超2,450万円以下 32万円
③合計所得金額2,450万円超2,500万円以下 16万円
④合計所得金額2,500万円超         0
(3)年金課税
①公的年金収入が1,000万円を超える場合の公的年金控除は一律1,955,000円とする。
②公的年金控除を一律10万円カットする。
③公的年金以外の所得に係る合計所得金額が、1,000万円を超え2,000万円以下の場合には、上記①または②の公的年金控除から更に10万円カットする。
④公的年金以外の所得に係る合計所得金額が、2,000万円を超える場合には、上記①または②の公的年金控除から更に20万円カットする。
(4)青色申告特別控除
①65万円の控除要件を以下のいずれかを満たす場合とした。
A 仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存法に基づいて保存していること。
B 確定申告書、貸借対照表、損益計算書等の提出をe-TAXで行っていること。
②①を満たさない場合で、従来の65万円要件を満たしている場合は55万円とする。
(5)適用開始時期
平成32年分から適用開始とする。

2 個人住民税

(1)基礎控除
基礎控除を所得に応じて、以下の通りとする。
①合計所得金額2,400万円以下       43万円(10万円アップ)
②合計所得金額2,400万円超2,450万円以下 29万円
③合計所得金額2,450万円超2,500万円以下 15万円
④合計所得金額2,500万円超         0
(2)適用開始時期
平成34年分個人住民税から適用開始とする。

3 事業承継税制

事業承継税制(贈与税の納税猶予・相続税の納税猶予)について10年間限定で以下のように、適用要件を緩和する。
(1)贈与(相続)する株式数の制限及び猶予税額の制限
特例後継者(注1)が特例認定承継会社(注2)の代表権を有していた者から、贈与又は相続若しくは遺贈による当該特例認定承継会社の株式を取得した場合には、その取得した全株式(従来は2/3が限度)の課税価格に対応する贈与税又は相続税の納税(従来は80%が限度)を特例承継者の死亡の日等まで猶予する。
(注1)特例認定承継会社の代表権を有する後継者であって、当該会社の同族関係者と合わせて当該会社の総議決権数の過半数を有する者)
(注2)認定支援機関の指導及び助言を受けて作成された「特例承継計画」を平成30年4月1日から平成35年3月31日までに都道府県に提出した会社
(2)後継者の制限
従来は後継者を一名に限定していたが、複数の後継候補者でも対象とした。
(3)雇用確保要件
雇用確保要件(経営承継期間である5年間の平均雇用割合を80%に維持する)を満たせない場合であっても、以下を要件として納税猶予を継続。
①認定支援機関の意見が記載されている理由書を都道府県へ提出
②当該理由が、経営状況の悪化、その他の正当な理由と認められない場合には、認定支援機関の指導、助言内容を記載したものであること。
(4)適用対象期間
上記の特例は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間に贈与等により取得する株式に係る贈与税又は相続税について適用される。

4 法人税

(1)所得拡大税制(税額控除制度)の改組(資本金1億円以下の法人)
① 対象要件
青色申告法人で、その年度の継続雇用者(注1)に対して支給した給与の一人当たり平均額が、前年の継続雇用者に対して支給した給与の一人当たりの平均額より、1.5%増加していること。
(注1)前事業年度及び当事業年度の全期間の各月において給与等の支給がある者
②税額控除金額
(その年度の給与等支給額-前年度の給与等支給額)×15%
ただし、当期法人税額の20%を限度とする。
③控除限度額の拡大
次の要件を満たす場合には、②の控除率を15%から25%に拡大することができる。
A ①の増加割合が2.5%以上であること。
B 次のいずれかの要件を満たしていること。
a 教育訓練費の額が前期の教育訓練費に比して10%以上増加していること
bその事業年度末日までに中小企業等経営力向上計画の認定を受けたもので、その経営力向上計画に従って経営力向上が確実に行われたものとして証明がされたこと。
④ 適用開始事業年度
平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度

(2)所得拡大税制(税額控除制度)の改組(資本金1億円超の大法人)
①対象要件
次のいずれの要件も満たしていること。
A 青色申告法人で、その年度の継続雇用者(注1)に対して支給した給与の一人当たり平均額が、前年の継続雇用者に対して支給した給与の一人当たりの平均額より、3%増加していること。
(注1)前事業年度及び当事業年度の全期間の各月において給与等の支給がある者
B その事業年度に取得した国内設備の取得金額が、その年度の減価償却費の90%以上であること。
②税額控除金額
(その年度の給与等支給額-前年度の給与等支給額)×15%
ただし、当期法人税額の20%を限度とする。
③控除限度額の拡大
次の要件を満たす場合には、②の控除率を15%から20%に拡大することができる。
【要件】 教育訓練費の額が前期の教育訓練費に比して20%以上増加していること
④適用開始事業年度
平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する各事業年度。
(3)大法人の研究開発税制等の優遇税制の不適用
資本金1億円超等の大法人が給与等の増額や国内設備投資を行っていない場合には、研究開発税制等を不適用とする。
①不適用となる要件
以下のいずれかを達成できない場合
A その年度の継続雇用者に対して支給した給与の一人当たり平均額が、前年の継続雇用者に対して支給した給与の一人当たりの平均額を超えること。
B 国内設備投資額が減価償却費総額の10%を超えること。
②不適用となる優遇税制
A 試験研究を行った場合の税額控除制度(研究開発税制)
B 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度(地域未来投資促進税制)
C 情報連携投資等の促進に係る税制
③対象事業年度
平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に開始する事業年度 

5 相続税

(1)小規模宅地の評価減の縮減-特定居住用宅地等
特定居住用宅地等の特例対象者から以下の者を除外する。
①相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係のある法人が所有する国内にある家屋に居住したことがある者
②相続開始時において居住していた家屋を過去に所有していたことがある者
(2)小規模宅地の評価減の縮減-貸付事業用宅地等
相続開始前3年以内に貸付事業の用に供された宅地(相続開始前3年を超えて事業的規模(注1)で貸付事業を行っている者が当該貸付事業の用に供しているものを除く)を適用対象外とする。
(注1)貸家で5棟、貸部屋数で10室以上の規模で不動産貸付を行なっている規模
(3)適用開始時期
平成30年4月1日以後の相続又は遺贈より適用開始。ただし、上記(2)については、3年以内であっても、平成30年4月1日前より貸付事業の用に供しているものは除外できる。

以上

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