2013/08/02
税理士 湊 義和
所得拡大促進税制
平成25年4月1日から平成28年3月31日までの期間内に開始する各事業年度(個人事業主の場合は、平成26年1月1日から平成28年12月31日までの各年。以下「適用事業年度」といいます。)において、国内雇用者(注1)に対して給与等を支給し、次の3つの要件を満たした場合には、その適用年度の法人税の額から雇用者給与等支給額(注2)のうち、雇用者給与等支給増加額の10%を控除することが認められました。ただし、控除税額は、その適用年度の法人税の額の10%(中小企業者等については、20%)を限度とされています。
要件①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が5%以上であること
要件②雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
要件③平均給与等支給額が比較平均給与等支給額以上であること
(注1)国内雇用者とは、法人または個人事業主の使用人のうち、法人または個人事業主の有する国内の事業所に勤務する雇用者(当該法人または個人事業主の国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載された者)をいい、雇用保険一般被保険者でない者も含みます。ただし、役員の特殊関係者や使用人兼務役員(使用人兼務役員の特殊関係者を含みます。)は、使用人から除かれています。
(注2)雇用者給与等支給額とは、国内雇用者に対して支給する俸給、給料、賃金、歳費および賞与ならびにこれらの性質を有する給与の額で、当該適用年度において損金算入される金額をいいます。
要件①の「基準雇用者給与等支給額」、「雇用者給与等支給増加額」とはそれぞれ次のとおりです。
「基準雇用者給与等支給額」とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額をいいます。なお、基準事業年度の月数と当該適用事業年度の月数とが異なる場合には、基準事業年度の雇用者給与等支給額に当該適用事業年度の月数を乗じてこれを基準事業年度の月数で除して計算した金額を基準雇用者給与等支給額とします。
例1:3月決算法人の場合の基準事業年度
→ 平成24年4月1日から平成25年3月31日までの事業年度
例2:12月決算法人の場合の基準事業年度
→ 平成25年1月1日から平成25年12月31日までの事業年度
「雇用者給与等支給増加額」とは、適用事業年度の雇用者給与等支給額から基準雇用者給与支給額を引いた金額をいいます。
要件②の「比較雇用者給与等支給額」とは、適用事業年度の前事業年度の雇用者給与等支給額をいいます。なお、前事業年度の月数と当該適用事業年度の月数が異なる場合には、当該前事業年度の雇用者給与等支給額に当該適用事業年度の月数を乗じてこれを当該前事業年度の月数で除して計算した金額を比較雇用者給与等支給額とします。
要件③の「平均給与等支給額」、「比較平均給与等支給額」とはそれぞれ次のとおりです。
雇用者給与等支給額および比較雇用者給与等支給額は、日々雇い入れられる者にかかる金額を控除して計算します。
月別支給対象者は、当該適用事業年度または当該前事業年度に含まれる各月ごとの給与等の支給の対象となる国内雇用者のうち日々雇い入れられる者を除いて計算します。
平成25年度の税制改正により、雇用促進税制の税額控除額が、増加雇用者数1人あたり20万円から40万円に引き上げられました。また、所得拡大促進税制は、雇用促進税制と選択適用(所得拡大促進税制を利用する場合には、雇用促進税制は利用できない)となります。所得拡大促進税制は、その利用に際して税務申告よりも前に特段の手続きを行う必要はありません。したがいまして、所得拡大促進税制と雇用促進税制のどちらかを利用する可能性はあるが、あらかじめどちらの制度を利用するかを判断できないという場合には、雇用促進税制の事前届出(雇用促進計画の提出)を行った上で、申告の際にどちらを利用するかを判断することをお勧めします。
近年の厳しい雇用情勢の中、給与所得者の平均給与額が年々減少し、特にリーマンショック以降は低位の水準に留まっています。そのため、給与所得者の給与水準の改善を通じた消費喚起によるデフレ脱却を達成するため、企業が給与等支給額を増加させた場合に、その増加額の一定割合の税額控除を可能とする所得拡大促進税制が創設されました。一方、平成23年に創設された雇用促進税制は、失業率を改善し、労働者数の増加を促進するため、企業が一定数の労働者数を増加させた場合に、その増加数に一定額を乗じた金額を税額控除させるという制度となっています。ただし、いずれの制度も社員の雇用環境の改善を目指している制度であることから、いずれか一つを選択適用することとされました。
以上
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